加藤ミケ
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捧げモノ。
2009-04-27 Mon 01:10

太陽と

4月、新しい学年になった所為か、どこか浮き足立っている周囲。
思えば、高校に入ってもう、3年目になる。
高校に入った当時は、あんなに生き生きして1日1日を大切に過ごしていたけれど、今の自分がそうだとはとても思えない。
全てのことが、どうしてか面倒に感じられて、何も考えられない。
感動するという行為が、わからなくなってしまった。
純粋さも、人間らしさも欠け始めている、そんな俺が大学に行って、この先の将来を歩むことに意味があるのかとすら疑問を抱いてしまう。
こんな人間になることなど、望んではいないのに・・・。
それというのもきっと、世界が矛盾と理不尽の極みだったということを目の当たりにしてしまったからなのだろう。
たとえば、教師と生徒の間に生まれる解釈の相違からの言い争い。
共に譲り合うことなしに、最終的には間違いであっても教師の権力が発動して生徒を潰す。
弱者である程簡単に、だ。
その是非を検討する間もなく、権力の差で決まってしまう。
そんな横暴を許す学校、いや社会・・・世界全体に俺は失望してしまったから。


こんな心境の中、新学期初日に配布された文書の中に地獄のような文書が含まれていた。
「 進路希望調査 」である。
こういうものが配られるのは、予想していたが、考えのまとまらない俺は今すぐこれを破り捨てたかった。
まぁ、そんなこと出来るわけも無いのだが・・・。
これまでいくつかの模試を受け、志望校調査には、よく耳にする大学を適当に書いておけば良かった。
だが、今回はそうもいかない。
本気で考えても、今の自分自身がどんなカタチをしていて、何を求めているのかという根本的な事から定まっていないのでどうしようもない。
無理やり今、考えたところで自分にあっていないと思えば本気になれない。
どうすりゃいんだ・・・?
親に見せてもきっと、模試の志望校を鵜呑みに話をするだろう。
それは全く希望しない進路だとわかっているので、此処で決めて親に話すべきなのだと思う。
だから安易には決められない。

帰り道の途中にある公園のブランコに揺られながら、独り考えを廻らせていた。
すると、横から突然声をかけられた。
いきなりのことで、驚いて前に重心が傾き、危うく堕ちそうになった。
なんとか体勢を整えて声のほうに向き直る。
と、そこには去年から同じクラスの三宅さんが立っていた。
そして、にこりと彼女は笑うと俺のとなりのブランコに乗った。
なんで?、そんな疑問が頭をよぎったが、気の利いた言葉も見つからなかったので、無言でしばらく揺れていた。

「この年でブランコ?」

突然、彼女が口を開いた。
まるで馬鹿にしたような台詞だったが、そういう風には感じさせない物言いで俺に投げかけた。

「ちょっと考え事してただけだよ。三宅さんはなんで此処に?」

当たり障りない質問をぶつける。彼女は俺の返答を聞くなり、うーんと唸ってそれから答えた。

「なんていうかね、誰かとこうやって話がしたかったの。
 そんな時、たまたま雪村くん見つけて今に至る・・・という。」

俺と彼女の接点は、無いに等しかった。
ただ去年から引き続きクラスが同じだけで、クラス内でも取り分け話す機会もなかった。
なのに何故、今こんなことになっているのだろう?
だいたい彼女と俺の住む世界は違い過ぎる。
彼女はクラスの中心的存在で、教師ウケもかなり良い生徒だった。
対照的に、俺はクラスでは目立たず、教師にもやっかまれる類の生徒だった。
彼女が俺に話しかけることなんて誰が想像できただろうか?
そして、先程の彼女の言葉を思い出す。
‘誰かとこうやって話がしたかった’と。
何故俺が、その‘誰か’なのだろう?
彼女はいつだって周りに人が居て、相談相手には困りそうもない。
わざわざ半孤立状態の俺を、‘誰か’に選ぶ必要は無いはずだ。
たとえそれが、偶然見つけた相手であったとしても、だ。

「ふぅん。それにしてもさ、三宅さんから話し掛けてくるなんて、すげー意外。」

茶化すような口調で彼女に投げかける。
よくわからないけど、俺に話しかけようと思った理由を知りたいと思ったからだ。

「意外?確かに。なんでだろ、雪村くんになら話せる気がしたのかなぁ。」

そんなこと聞かれても分かる訳ない。でも、他の連中と話すよりもずっと。不思議と彼女は話しやすかった。

「なんだそれ。わかんないやつ。
 でも、不思議だな。俺もそう思うんだ。全然住む世界が違うのにな。」

そう答えると、彼女はまたにこりと笑った。

「それは嬉しいなぁ。でも、住む世界が違うって、なんでそう思うの?」

傍から見れば当たり前だと思っていることを、何故と問われるとは思わなかった。
俺は、彼女の問いに当然というように答えた。

「なんでって、普通に考えてそうじゃね?
 クラスの中心で人に囲まれてる人間と、目立たなくて孤立しかかってるような人間。
 同じ世界に住んでるって言わないだろ?」

言いながら俺は、視線を彼女から外して赤色に染まる空を見つめる。
俺は影、そしてきっと彼女は太陽のようなものだ。


「ち・・・・う。それは、違うよ。」

振り向くと、掠れた声で彼女が、俺の方に睨み付ける程強い視線を向けてきた。
彼女の乗ったブランコは気づけば止まっている。

「いくらクラスの中心であろうと、深い付き合いをしなければ、居るも、居ないも変わらないのよ。
 あたしは、本当は何も持ってない。だって、深く人と付き合おうとしてないから。
 皆を蔑んで、世の中くだらないって思って生きてきた。
 だから、こういうとき、こんな風にどうしようもなく人に愚痴を聞いて貰いたいとき、誰も居ないのよ。
 本当にあたしの、三宅智沙の話を聞いてくれる人なんて、・・・誰も。」

ヒステリにも似た声で訴える彼女の瞳には、涙が溜まり、ついには一筋の涙が頬を伝った。
そこで俺は、ようやく間違いに気づいた。
何不自由なく、世界の矛盾を上手くかわし、上手い生き方をして、他人の信頼を簡単に得て、孤独とは無縁なのだと思っていた彼女。
けれど、それは俺の思い込みで、彼女は深い人付き合いが出来ずに孤独だったんだ。
想像もしなかった。彼女と俺は、とてもよく似ていたなんて。
ただ生き方が違っただけで、その心は酷く似ていた。

俺はブランコを降り、彼女の頬に手を触れた。
すると彼女は、堰を切ったように泣き始めた。
自分が泣かせたようで、どうしたらいいのかわからない。
とにかく俺は、今思ったことを必死に彼女に伝える。

「俺も三宅さんも、似たもの同士なのかもしれない。
 でもさ、ずっとお互い、孤独だったけどさ。
 これからは、独りじゃない。自分の孤独を知る人が居る。」





「それだけで世界は変わる気がしない?」


そう言いながら俺は、孤立して以来初めて、心からの笑顔を浮かべた。

誰だって、どこか孤独を抱えて、そうやって生きてる。
だから、その孤独を知り合える誰かが居てくれること。
それが俺たちの意志を、前進することへの意欲を、限りなく本物にしていくんだ。
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2009-04-27 Mon 23:35 | | #[ 内容変更]
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